東京高等裁判所 昭和26年(う)910号 判決
然しながら中止未遂であるがためには、犯人自ら結果の発生を防止するか又は自ら防止したと同一視するに足るべき程度の努力を払うことを必要とするものと解すべきを相当とする。然るに本件においては、原判示第二事実摘示のとおり「被告人は枯松枝の燃えあがるのを見て急に恐ろしくなり同家の娘光子に火事だと知らせ、二人で火事だ火事だと大声で叫んだので附近の加藤淳二等がかけつけ消火し、そのため北側の板戸一枚をくん焼したのみで焼毀の目的を遂げなかつた」のであつて、右の如く未遂に終つたのは被告人の防止行為(消火行為)又はこれと同視する努力のあつたためとは到底認め難く、従つて原判決が原判示第二事実につき中止未遂を認めなかつたのは洵に相当であつて、論旨はその理由がない。